2022/10/24
私はハノイの空気を吸っていた。
日本とは明らかに違うにおい。
その味を噛みしめるといつも別の場所に来たんだなと思う。
ハノイに来た理由は仕事を辞めて時間があったからだ。
安くいけるし、日本人の舌に合う料理があるからなどの理由で選んだ。
ノイバイ空港からバスに乗って、ハノイ市街に来た時には日本と違う風景に驚いた。
少し開けた道路を何百もの数え切れないバイクやクルマがぶつからないように器用に走っているのだ。
「何でもありだな。」
そうつぶやくしかなかった。
日本の整理された秩序にどっぷり浸かっていた私にとっては、その風景が怖く感じられた。
しかし、それは最初だけ。
ハノイの道路には信号があるところが少ない。
どうしても道を横切らないといけない時がある。
私はバイクが行き交う道路を渡ろうとキョロキョロしていると、
近くにいたおばちゃんと目が合った。
そのおばちゃんの眼光は鋭く、
「あんたここの人じゃないね。まだ何もわかっていない。とりあえず、ついてきな。」
と言われているような気がした。
おばちゃんと言葉を交わしていないが、
目が合っただけで、何かすごい力強さと頼もしさを感じた。
すると、おばちゃんはタイミングを見計らって、
バイクが行き交う難攻不落の牙城に正面から攻めていく。
私は何食わぬ顔でおばあちゃんの後を追う。
急な横からのバイクの突進もおばちゃんは手を挙げて牽制する。
一歩もとまらず、ひたすら前に進む姿はまさに大将軍。
おばちゃんの配下にいたのは私だけだったが、
大将軍がいればどんな難攻不落の道も攻略できる気がした。
大将軍の率いる小さな戦いは10秒程で終わった。
おばちゃんは歩幅を緩めず颯爽と歩いていき、
次第に日常のごく一部として街の雰囲気に溶け込んでいった。
「おばちゃんありがとう。」
私はあの頼もしい背中を一生忘れられないだろう。
それと同時に、
「これがハノイの洗礼か! 私もまだまだだな」と痛感させられた。
おばちゃんの姿を見て以来、
道を行き交う何百ものバイクの牙城を、
どういう風に攻め込もうかと考えるのが次第に楽しくなってきた。
おばちゃんから学んだこと。
「恐れず前に進め!それがハノイで生きていく第一歩だ!」
ハノイに住む人たちにとっては当たり前にある日常だ。
もしハノイに住む人にこの出来事を話したら、
「そんなことにビビッてどうする 笑」と笑われそうだが、
私にとってはジャックポットを当てたくらい満ち溢れた気持ちになった。
これだから旅は面白い。
これからも、もっと旅をして想像もできない出来事を経験したいな。
時間があるうちに旅をしよう。そう心に決めた。
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